武医BLOG

武井メモ

人工関節手術のテレビを見て…

 素晴らしい手術なんでしょうけど、オススメは出来ない内容でした。

 素材が骨の一部になるような素材で、補完的に付けるぐらいならよいと思いますが、その方の骨の強度(骨密度)と、金属の強度が常に一定にならなければ、手術部からの骨折に繋がりますし、手術した部分のみが、痛みに繋がった全ての原因ではないので、手術部分以外には強い負担が掛かってしまいます。

 テレビで拝見した患者さんぐらいの治りたい気持ちと努力があれば、時間は掛かりますが、施術とリハビリで回復出来ます。

 それでも、手術で治したい方は、『脊椎変性疾患』の手術で、今までの『脊椎固定術』とは全く違う方法を開発された医学博士がいらっしゃいますので、その先生の方法が全ての人工関節に応用される事を祈ってください。
 その方法とは、患者のCTスキャンデータと、チタンの立体物を製作できる金属積層3Dプリンターで、必要な部分に合わせチタン製のカバーを製作、骨にカバーを被せて骨を補強、連結にはバネを用い柔軟性を持たせる方法(連結や、軟骨の代わりにタフポリマー素材を使っても良いと思います)。骨は一切傷つけないみたいですし、チタンに穴を開けているので、自然と骨と結合していくみたいです。

以下引用文
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一人の専門医が生み出した「骨を傷つけない脊椎固定術」
Forbes JAPAN 編集部 嶺 竜一
2017/10/21 18:00

菅原卓 医師

【絶え間なく襲ってくる疼痛やしびれが、クオリティ・オブ・ライフを著しく低下させる。国内400万人、世界2億人を苦しめる「脊椎変性疾患」の希望の光となるか。】

人間には首から腰まで、24の背骨(脊椎)があり、その間には、可動とクッションの役割を担う23の円盤状の関節(椎間板/ついかんばん)がある。背骨は正面から見れば真っ直ぐ、横から見れば綺麗なS字を描き、体重を支えている。

二足歩行する人間には、この背骨の関節に関する疾患が宿命だ。日本には、加齢による筋力低下や筋肉系の病気、事故等が原因で、屈曲したり、背骨がズレるなどの「脊椎変性疾患」を持つ人が400万人いる。全国民の30人に1人。高齢者における患者の割合ははるかに高い。

初期のうちは薬や理学療法などによって回復を試みるが、酷くなると激痛や麻痺で、まともに歩けなくなり、車椅子、寝たきりになってしまう。

最後の治療法が、「脊椎固定術」だ。上下の背骨を正常な位置に戻し、治具で固定するその手術は、まるで大工工事だ。背中を大きく切開し背骨を露出。背骨に下穴を開け、長さ5センチ程度、直径5ミリ前後の大きな金属製スクリューを、1つの背骨に左右に1本ずつ、2本ねじ込む。上下2つの背骨の固定なら4本、3つの背骨の固定なら6本刺入し、スクリューをロッド(棒)に固定。さらに、背骨と背骨の間の「椎間板」を取り除き、金属スペーサーに入れ替える。こうして、背骨が全く動かないよう“工事”するのである。

日本では年間8万人の人が受けている手術だが、「これがベストな治療だとは、専門医はおそらく誰も思っていない」と秋田県立脳血管研究センターの菅原卓医師は言う。菅原は年間250件を行う脊椎手術のうち30~40件は脊椎固定術を行っているが、「他に手がない時に仕方なく選択する治療ですね」と告白する。

「まず手術にリスクが伴う。スクリューが本来の設置部位から逸脱する危険性が10~30パーセントもあり、時に神経・血管損傷を起こしてしまう。患部を大きく切開したまま手術時間が長くなるので、感染症のリスクも大きい。それでいて成果が良くないんです。骨というものは、表面は硬いが内部は柔らかい。骨粗鬆症の人などは特に、スクリューが中で動いてグラグラになり、表面の骨も壊れて抜けてしまうんです。抜ける人は1日で抜けます。そうなると再手術ですが、一度抜けた骨にはもうスクリューは刺さらない。手術が成功してうまく固定できても、次にはその上や下の関節が変形してしまうのです」

そうなればその上下の背骨にも固定術を施す。そうして10個以上の背骨が治具で固定されている人もいる。体は全く曲げられず、靴下も履けない。

入院は約1カ月。感染症や再手術になれば3カ月や半年といった長期入院になる。そうなれば筋肉は衰え、ますます自立困難に近づいてしまう。

約30年前から主流となった脊椎固定術のスクリュー治具は、米国のメドトロニック、ジョンソン&ジョンソン、ストライカーなど大手5社でシェア80パーセントを占める。治具だけで1セット70万円ほどもする高額治療だ。さらに手術には1~2億円程度の専用の医療機器も必要となるため、国内で施術できる医療機関が限られるが、このリスクが高い治療に最後の望みを賭ける患者は多く、多くの病院で手術待ちだという。

患者の苦しみと失望に接し続け、この手術に代わる治療法を何年も思考した菅原が思いついた発想は、従来の脊椎固定術とは全く違うものだった。

【骨も、希望も、壊したくなかった】

人間の脊椎の背中側には、恐竜の骨に見られるような、棘突起(きょくとっき)という突起がある。この突起の一つひとつに、チタン製のカバーをかぶせて連結すれば、背骨を一切傷つけなくても固定できるのではないか。しかも、連結にバネを用いれば、柔軟性を持たせることも可能かもしれない。これなら椎間板も残せるのではないか、と思いついたのだ。

棘突起の形状は、骨一つひとつ違う。ならば、オーダーメイドのインプラントを作ればいい。脊椎の立体図面を作ることはさほど難しいことではない。CTスキャンの画像から再現できるからだ。

問題はチタンカバーを製作することだった。菅原は初め、切削メーカーに依頼し、5軸マシニングセンターを使って削り出しで作った。品物は出来たが、コストが問題だった。1つのインプラントの製造に原価が100万円ほどかかるのだ。これでは実用化は難しかった。

2012年、スウェーデンのARCAM社が、チタンの立体物を製作できる金属積層3Dプリンターを開発し、販売していることを知った。調べると、神奈川県小田原市で自動車エンジンや航空機のパーツの試作を行っているコイワイという会社が国内で先駆けてこの装置を購入し、受託製造を行っているという。

連絡を取ると、小岩井豊己社長はすぐに菅原のもとにやってきた。小岩井は目の前に試作品を並べた。それは精緻で、美しかった。3DCADのデータをもらえれば、一晩で製造できるという。価格も安い。「これはいける」と菅原の心が躍った。脊椎インプラントの開発・輸入・販売を行うアムテックと連携し、AMED(日本医療研究開発機構)の委託事業にも採択され、開発は進んだ。

想像していた以上の嬉しい効果があった。骨と接するチタンカバーを骨がとりこみ一体化するのだ。チタンカバーに小さな穴を多数開けたところ、より強固に一体化することがわかった。

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菅原はこの機構で日本、ドイツ、スイスで特許を取得。アメリカでも間もなく取得できる見込みだという。

製作日数は1日。CTスキャンデータを3DCADデータに置き換え、コイワイに送付すると、翌日に出荷されるという。つまり、早ければ病院でCTを撮影した3日後には、手術が可能となるのだ。

手術ははるかに簡単。切開範囲は狭く、手術時間は30分程度と従来の6分の1。合併症リスクは小さい。特別な医療機器は不要で、一般の病院で手術が可能。入院は一週間で済む。何よりも、背骨も椎間板も一切、傷つけない。

今、薬事法の申請準備をしているところだ。早ければ今年度中に認可がおり、来年4月以降、実用化の可能性が高いという。一人の専門医の発想と出会いから生まれた金属のカバーは、世界の脊椎疾患患者の希望の光となるかもしれない。

菅原 卓◎秋田大学医学部卒業。秋田県立脳血管研究センター脊髄脊椎外科診療部部長。医学博士。1989年より脳神経外科医。2001年より脊椎治療を始める。年間250件の脊椎手術を行う。日本脊髄外科学会理事・認定医・指導医。